相続とは?
/ Inheritance what is it?
相続とは、人の死亡により、その死亡した人の財産に属する一切の権利義務(死亡した人の一身に専属したものを除く)を引き継ぐことをいいます。
ここで、死亡した人を「被相続人」、財産等を引き継ぐ人を「相続人」といい、相続は被相続人が死亡した瞬間に開始します。
相続に似たものとして、死因贈与と遺贈が挙げられます。
死因贈与とは、「自分が死んだ時は○☓○☓を贈与します」といったように、贈与をする人の死亡を期限として贈与することをいいます(不確定期限付きの贈与契約)。
死因贈与は契約であるため、贈与をする人と贈与される人のお互いの意志が合致することが必要となります。
遺贈とは、遺言によって自分の財産を無償で他の人に与えることをいいます。この場合の「他の人」は、相続人だけではなく、相続人以外の人が入ってくる場合もあります。
相続人となれる者の範囲は民法によって定められています(法定相続人)。
■配偶者は常に相続人となります。配偶者は、婚姻届が出されていれば別居中であっても相続人となります。また、婚姻届を出していない内縁関係の場合は相続人とはなれません。
■血族に順位を付し相続人とします。
ここで血族とは血縁のある人、養子縁組した人のことをいいます。
【第1順位】被相続人の子(直系卑属)。被相続人よりも前に子が死亡しているときは孫、孫も死亡しているときは孫の子。この場合を「代襲相続」といいます。
【第2順位】第1順位に該当する者がいない場合には、被相続人の親(直系尊属)。被相続人よりも前に父も母も死亡しているときには祖父母。
【第3順位】第1順位、第2順位に該当する者がいない場合は、被相続人の兄弟姉妹。兄弟姉妹が死亡しているときは、兄弟姉妹の子(甥、姪)が代襲相続します。なお、兄弟姉妹に代わって相続人となれるのは甥、姪までです。
上記の法定相続人の他に遺産を引き継ぐことが出来る人は次の通りです。
■受遺者…遺言で財産の受取人として指定された人
■特別縁故者…法定相続人も受遺者もいない時に、被相続人と特別の縁故があったということを家庭裁判所に申し立て認められた人。
遺言書の方式
/ How to write a good at last will and testament
■遺言書の方式
遺言には、普通方式と特別方式があります。
-
自筆証書遺言
自筆によって全文を書いたものです。遺言者が遺言内容、日付、氏名を自書し、押印することを要します(民法968条)。
自筆証書遺言は、手軽に書くことが出来る点がメリットですが、偽造、変造、紛失、隠匿、未発見のおそれがあるなどのデメリットもあります。
-
公正証書遺言
公証人が、証人二人以上の立会いのもとに遺言書を作成します(民法969条)。
偽造などのおそれはなく、公証人によって内容の確認も出来るため、後日無効になる心配もありません。家庭裁判所における検認の手続きも必要ありません。
-
秘密証書遺言
遺言者が遺言を書き(自筆でなくともよい)、署名押印をして封筒に入れて閉じ、遺言に押印したものと同じ印で封印をします。
これを公証人と証人に提出して確認を受けます(民法970条)。
これらは、死亡の危急に迫った人などが行える遺言です。
死亡危急者の遺言、船舶避難者の遺言については、家庭裁判所の確認の手続きが必要となります。
遺言書の書き方
/ How to write a last will and testament
自筆証書遺言の形式は、民法968条に定められています。
この形式を守らなければ、遺言書そのものが無効となってしまいますので注意が必要です。
但し、遺言書が無効となっても、相続人が被相続人の意思を尊重し、無効となった遺言の内容に則って遺産を分割することは当然可能です。
①自筆証書遺言は、遺言者が、遺言内容の全文、遺言を書いた日付、氏名を自書し、押印しなければなりません。
②記載内容の訂正・変更は、遺言者が訂正・変更箇所を明示したうえで、訂正・変更した旨を付記し、これに署名し、訂正・変更場所に押印しなければ無効になってしまいます。
※パソコンやワープロで書いて印字した遺言は無効です。必ず全文を自書する必要があります。また、日付の記載も、例えば「5月吉日」といった書き方では無効となりますので、必ず具体的な日付を記載して下さい。
※押印に使用する印鑑は認印で結構です。朱肉が必要ないスタンプ印は使わないで下さい。
※遺言はたとえご夫婦であっても、おひとりずつ別に書いて下さい。共同の遺言はできません。
よくあるご質問
/ FAQ
-
おなかの子が生まれる前に夫が急死したのですが、生まれてきた子は夫の相続人になれるの?
-
おなかの赤ちゃん(胎児)も相続人となります。
胎児は、相続については既に生まれたものとみなされます(民法第886条)。
ただし、胎児が死んで生まれてきた場合は、この規定は適用されません。
したがって、遺産分割を行う場合は、胎児が出生した後に行うのが望ましいでしょう。
-
夫が亡くなりました。
私は、夫と25年間一緒に暮らしていましたが、婚姻届は提出していません。
私には相続権はないのでしょうか?
-
法定相続人とはなりません。
民法では、配偶者は常に法定相続人になると定めています(民法890条)。
しかし、婚姻届を提出していない、いわゆる事実婚の場合の配偶者(内縁の配偶者)は、民法でいうところの配偶者には該当せず、相続権はないこととされています。
但し、お亡くなりになった方に法定相続人がいなければ、特別縁故者制度(民法958条の3)という制度により、特別縁故者として家庭裁判所に申立てを行い、相続財産の全部または一部を受け取ることも可能となります。お亡くなりになった方に法定相続人がいる場合は、この制度も対象外となります。
ご質問の場合、奥様には相続権はないということになりますが、ご主人に法定相続人が一人もいない場合は特別縁故者として相続財産を受け取ることができる可能性もあります。
内縁の配偶者に遺産を相続させたいとお考えになる場合は、遺言により遺産を相続させる(遺贈)旨を明らかにしておくか、内縁の配偶者との間で死因贈与契約を締結しておく必要があります。
-
再婚した夫が亡くなった場合、私の連れ子は夫の相続人になれるの?
-
再婚したご主人と連れ子であるお子さまとの間に養子縁組を行っていない場合は、お子さまは相続人とはなりません。
民法では、被相続人の子は相続人となるとしています(第887条1項)。
ご主人と、養子縁組を行っていないお子さまとの間には、法律上の親子関係は発生しておりません。したがって、相続人となる「子」にはあたりません。
一方、養子縁組をした場合は、養親の嫡出子(※)の身分を取得するため(第809条)相続人となります。
連れ子であるお子さまに財産を引き継がせたい場合は、生前に養子縁組をしておくか、遺言によって遺贈するという方法が考えられます。
※嫡出子(ちゃくしゅつし) とは、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どものことをいいます。
-
不動産の名義変更をする場合の登録免許税っていくらかかるの?
-
相続の場合は固定資産評価額の1000分の4(つまり0.4%相当額)、
贈与の場合は固定資産評価額の1000分の20(2%相当額)です。
税額に100円未満の端数が生じた場合は切り捨て、算出した税額が1000円未満の場合は1000円とします。
この他に、司法書士の手数料がかかることになりますが、固定資産評価額・物件の数などによって金額が変わりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
-
父には多額の借金があります。父が亡くなった場合にこの借金を引き継がないために、生前に相続放棄することは可能?
-
生前に相続放棄することはできません。
相続放棄の手続きは、人が亡くなったということを知ったとき以降、初めてできる手続です。
お父様の借金を引き継がないためには、お父様が亡くなった後に相続放棄の申述をすることが必要になります。
実際に相続放棄をした場合は、借金などのマイナスの財産だけではなく、土地や建物などのプラスの財産も引き継げなくなります。
お父様の生前に借金問題について解決しておく方法もあります。
長年、消費者金融などからの借入があったのであれば、払い過ぎた利息の返還請求が可能な場合もありますし、債務整理をすることにより債務の額が減額になる可能性もあります。
-
亡父は資産よりも借金の方が多かったけど、どうしたらいい?
-
相続放棄をすることにより、借金(負債)を引き継がなくてもよくなります。
この場合、資産についても引き継ぐことはできなくなります。つまり、全ての財産を引き継がないということです。
相続放棄をするためには、自己のために相続の開始があったことを知った日(ご質問の場合はお父様が亡くなったことを知った日)から3ヶ月以内に、お父様の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述しなければなりません。
この期間を過ぎると自動的に相続を承認したことになります。
-
私は17歳ですが未成年者でも遺言することはできるの?
-
未成年者であっても、15歳に達していたならば遺言することはできます(民法第961条)。
-
封をしていない自筆証書遺言が見つかったけど、これも裁判所の検認が必要?
-
この場合も家庭裁判所の検認が必要になります(民法第1004条1項)。
遺言書の検認は、公正証書遺言以外の遺言書(自筆証書遺言、秘密証書遺言、その他の特別方式の遺言)について必要な手続きです。
遺言書の検認は、遺言書の形式や状態の調査・確認の手続きで、遺言書の偽造などを防ぎ、その保存を確実にするためになされます。
したがって、自筆証書遺言の場合、封をしていてもしていなくても、家庭裁判所の検認が必要になります。
当事務所では司法書士が家庭裁判所に対する遺言書検認申立の手続きを行うことができます。
-
遺言で保険金の受取人を変更できるの?
-
平成22年以降の契約では、遺言による保険金受取人の変更もできます (保険法第44条1項、第73条1項)。
遺言によって保険金の受取人を変更する場合、どの保険についてであるかを遺言書に明示しなければなりません。
具体的には、当該契約の保険会社、証券番号、従前の保険金受取人等を記載し特定しておくことが必要になります。
この場合、保険契約者(お亡くなりになった人)の相続人は、保険契約者の死亡後に、保険金の受取人が遺言で変更されたということを保険会社に通知しなければなりません。
この通知がなされる前に保険会社から変更前の保険金受取人に保険金の支払いがあった場合、変更後の保険金受取人からの請求があったとしても保険金は支払われません。
-
封がされている自筆証書遺言の内容を確認したいので開封してもいい?
-
開封してはいけません。
封印がされている自筆証書遺言については、相続人又はその代理人の立ち会いのもとで、家庭裁判所において開封することが必要です(民法第1004条3項)。
もし、検認の手続きをせずに、勝手に開封してしまった場合は、5万円以下の過料に処されます。